銀野舎
銀野舎ブログ思い出映画「タイタニック」の思い出
[2021/12/25] ブログ思い出
映画「タイタニック」の思い出
 二十数年前のお話。
 恋愛映画はほとんど見ないが、「タイタニック」は物凄く話題になっていたので見に行った。上映開始から数ヶ月は経った頃だと思う。
 昔の映画館は現在のように上映一回ごとの入れ替え制ではなく指定席でもないので、僕は見ようと思っている回のひとつ前の回の終盤くらいから場内に入り、後ろの壁際に立って出来るだけスクリーンの映像を見ないように待っていた。
 伏し目がちに場内を見渡すと、席はほぼ埋まっていた。完全な満席ではないが、全体の9割以上の席が埋まっているように見えて、所々に飛び飛びで空席があるような状態。

 この回の上映が終わり場内が明るくなってから、僕は適当な空席を見つけて座った。帰っていく人と入ってくる人がどんどん入れ替わり、席がどんどん埋まっていく。
 場内の混雑が一通り収まると、ちょうど僕の前の席と隣の席が空いたままだった。このままならゆったり座れて前も見やすくて良いなぁ、などと思っていたら、両方の席に人が来た。

 僕の前に年輩の男性が来て、僕の隣に年輩の女性が来た。男性と女性は座りながら何やら話しており、一緒に来ているようだ。ご夫婦なのだろうか。失礼かもしれないがあえて言うなら老夫婦。僕は映画を見ながらもその老夫婦のことが少し気になっていた。
 しばらくすると、僕の前の男性が頭を動かさず肩越しに手の平だけを後ろへ差し出した。すると僕の隣の女性がその手の平に小さな丸い物を置いた。男性はそれを握り、顔の前へ持っていき一瞬の間を置いてから口に含んだように見えた。おそらく飴だろうか。
 映画の最中にそのやり取りが数回あった。とても慣れたもので、男性が後ろを振り向くことは一度もなかったし、女性から前へ何かしらの合図をすることも一度もなかった。きっと、長年ずっと2人で映画を見に行っているのだろう。そして、いつもこういうやり取りをしているのだろう。男性の行動は自己中心的で女性は従順なようだが、年代的にそんな関係性も決して特殊ではないだろうし、老夫婦になっても一緒に映画を見に行くくらいなのだから仲良いのだろう。


 DVDも買って「タイタニック」は何度も見ている。好きなシーンを挙げればたくさんあるが、ラストシーンが特に大好きだ。
 ジャックとローズが出会い、みんなが祝福している。あれはローズの夢なのか、パラレルワールドなのか、映画作品としてのエンディング映像なのか、分からない。でも、どれであったとしても、あのラストシーンが一番好きなことは変わらない。

 今でもたまに「タイタニック」の話題を見ると、あの老夫婦のことも思い出す。もしもタイタニックが沈没しないで、もしもジャックとローズが結ばれていたのなら、2人は年老いるまで末永く一緒に仲良く楽しく暮らしたのだろうか。2人で映画を見に行ったりもしたのだろうか。
 僕にとって「タイタニック」は、壮大な愛の物語であり、何気ない幸せの物語でもある。
ブログ思い出
映画「タイタニック」の思い出