人気急上昇中のアイドルグループ「チェリーケーキ・バナナジュース」、愛称「チェリバナ」の全国ツアーのライブを初めて見た。
メンバーは、マイ、ナナミ、サクラ、ユリ、アヤメの5人。
可愛いメンバーが綺麗なドレスを振り乱して激しいパフォーマンスをするらしい。私ももちろんグループ名は知っていて興味があったが、取材が決まってから今日のライブを最高に楽しみたいと思い、最低限の基本情報だけ確認して、ライブに関する事前情報はほとんど入れずにライブに来た。
ライブ会場の付近は、公式グッズのTシャツやパーカーを着ている人で埋め尽くされていた。ほとんどの人が、自分の好きなメンバー、アイドル用語で言うところの「推しメン(推しているメンバー)」の名前が書かれてるグッズを身に付けている。衣装のコスプレをしている人も結構いる。コスプレは自作だろうか?クオリティが素晴らしく高い。
ライブ会場の敷地内には物販ブースとして多数のテントが並んでいる。
メンバーの名前や写真がプリントされたグッズが売られており、長い行列ができていた。Tシャツ、タオル、ペンライト、キーホルダー、アクリルスタンド、エコバッグ、メンバープロデュースのオリジナルグッズ、等々。
大きなパネルが立てられており、販売されているグッズの写真を一覧で確認できるようになっていた。よく見ると、バツが付けられてるグッズや、メンバーの名前に線を引かれているところがいくつかある。それは売り切れた目印らしい。メンバーによって早々にグッズが売り切れたり、売れ残ったりする。グッズの売れ行きはファンの数にほぼ比例するだろう。人気の差が明確に分かってしまう。残酷な世界だ。
物販ブースの反対側のエリアには飲食ブースがある。
こちらにも大行列が出来ていて、グループ名にもなっているチェリーケーキとバナナジュースを売っていた。チェリーケーキはバータイプ、バナナジュースはストローが付いたボトルタイプなので、立ったままでも食べたり飲んだりできる。だけどそれにしても、チェリーケーキは口の中がパサパサするし、バナナジュースはドロドロして吸いづらいし、ライブ中に食べ飲みするものとしては合わないのでは?と思うのだが、大行列でファンがみんな買っていた。
せっかくだから私も行列に並んで買ってみた。ボトルにはメンバーの写真がプリントされている。ファンはみんな推しメンのボトルを買っているようだ。私はまだ推しメンがいないので、全員の集合写真がプリントされているボトルを買った。
味は非常に美味しい。これは売れる。専門店があってもいいくらいのクオリティだ。
ライブ会場の建物の壁沿いにはメンバーの等身大パネル看板が飾られていて、ファンがそのパネルの前で推しタオルを掲げて記念写真を撮っていた。みんな自分の番が来ると後ろに並んでいる人にスマホを渡して撮って貰っている。次の順番の人が撮ってあげる、という暗黙のルールが出来上がっているのだろう。大勢が密集してはいるが、きちんと並んでいてスムーズに進んでいく。
そう言えば、アイドルのライブでは開始前から馬鹿騒ぎして周りの迷惑になっている集団がいたりする。だが私が見る限り、チェリバナのライブにそういう輩は全くいなかった。
アイドルとファンは似る、と私は思っている。こんなに礼儀正しいファンが付いているチェリバナは間違いなく素晴らしいアイドルグループだろう。会場に入る前から期待が高まっていく。
入口のゲートでしっかりした本人確認と持ち物検査を受けてから、入場。
会場は入口から全体的にカラフルに飾られている。会場全体がステージのセットのようだ。とても華やかでテンションが上がっていく。
会場内に入って周りを見渡してみると、ファン層は男性と女性がちょうど半々くらいだろうか。よく言われることだが、同性のファンの心を掴むことができるアイドルグループは成功する。
会場全体が暗転し、ライブスタートの合図となるオーバーチュアーが流れる。大きなどよめきと歓声が沸き起こる。
メンバーが1人ずつステージに出てきて、スポットライトが当たってオープニングのソロパフォーマンスが始まった。
ウエディングドレスのような豪華なドレスで華麗に舞う。綺麗、可愛い、と思うのと同時に、そんなに重厚なドレスを着てそんなに軽快に踊れるのか、という驚きもある。
マイ。
グループのリーダーで、誰もが認める絶対的センター。ファンから神と称される輝く綺麗さと、赤ちゃんと称されるお茶目な可愛さを併せ持つ、天性のアイドル。
メンバーカラーは赤。
ナナミ。
スタイル抜群のスタイリッシュなクール系。メンバー達を静かに見守っていることが多いが、ときおりメンバー達とワチャワチャしながら見せる無邪気な笑顔が可愛い。
メンバーカラーは青。
サクラ。
真面目な努力家。グループ結成当初は歌もダンスもトークも下手だった。だが、一生懸命に努力を続け、今ではあらゆる面でグループを引っ張る存在に成長した。
メンバーカラーは桃。
ユリ。
のんびりふわふわおっとり癒し系。だが、曲のパフォーマンスになると豹変して、力強い歌声とダンスで大爆発する。考え方に芯があり、一度決めたことは絶対にやり通す。
メンバーカラーは白。
アヤメ。
グループの最年少。年上のメンバー達から甘やかされて喜んだり、だけど子供扱いされると怒ったり、コロコロ変わる表情とちょこちょこ動く仕草が愛らしい。
メンバーカラーは紫。
ルックスは全員もれなく美形。そして全員がそれぞれ違うタイプの綺麗さと可愛さ。
5人がステージ上に揃い、大歓声の渦の中、ライブ本編が始まった。
本当は披露された全曲をレポートしたいのだが、記事の文字数に限りがあるので、特に印象に残った数曲のみに絞らせてもらう。
「飛び越えるより、ブッ壊す」
チェリバナの記念すべきデビュー曲であり、いつもライブの1曲目に必ず歌うアンセム。
壁を飛び越えれば自分は前に進めるけど、壁はそこに残ってしまう。後に続く人達の為に、壁をブッ壊して進む。
そんな時代の先駆者であろうとするチェリバナの熱い心意気を込めたメッセージソング。
「ジョーカーリリー」
アジアの風を感じさせる曲。多国籍がミックスされた不思議な雰囲気。ほんの少しでも外すと不協和音になってしまいそうな危ない綱渡りを、全員が抜群のリズム感と歌唱力で軽快に走り抜ける。
曲の間奏でアジア系の格闘アクションが入るのがライブのお約束の演出。
「ジャージとドレス」
努力するレッスン場のジャージ姿から、華やかなステージ上のドレス姿に変身する。チェリバナのデビューまでの下積み時期を描いた物語のような歌詞。
ドラマティックに進んでいくミュージカルのようなパフォーマンスが素晴らしい。一本の映画を見たような満足感がある。
「子猫アサシン」
可愛さを武器にしている子猫の暗殺者が主人公のコミックソング。曲の中で可愛い台詞を言う部分があり、ライブではアドリブで毎回違う台詞を言う。面白い歌詞と可愛い台詞のギャップがいい。
ライブの中で1・2を争うほど盛り上がる人気曲。
「ボクはキミが好き」
ド真ん中ドストレートのラブソンブ。
比喩表現の言葉などは使わず、ただただ何度もストレートに「キミが好き」と繰り返す。シンプルな言葉だからこそ心に刺さる。
アップで映るメンバーがエンドレスで「キミが好き」とだけ言い続ける動画がネットでバズったことがあった。
「甘いホットミルク」
眠れない夜は一緒に甘いホットミルクを飲もう。そんな甘い曲。踊らずに椅子に座ってホットミルクを飲みながら囁くように歌う。
ちなみに、会場ではなく自宅でライブ配信を見ているファンは、この曲の時だけイヤホンをして一緒にホットミルクを飲みながら見るらしい。
「花は咲いている」
サクラ、ユリ、アヤメ、3人のユニット曲。
オーディションで何度も落ちても諦めずに挑戦し続けた3人が、遂に自分の居場所と仲間を見つけられた喜びを歌った曲。3人が自ら書いた歌詞が感動的。
この日のライブでは、3人が途中で泣いてしまい歌えなくなったが、マイとナナミが急遽ステージに上がって、会場全体でファンと合唱した。
「さくらんぼ兄弟」
マイ、ナナミ、2人のユニット曲。
さくらんぼのようにずっと一緒にいる兄弟の絆を歌った曲。ライブではいつも会場の端と端に2人がいて、サビで2人がステージで会って手を繋ぐ。
2人のユニット曲だが、メンバー全員の友情の曲でもある。今回のライブではサビで3人もステージに上がってきて、5人で手を繋いだ。
「時代サーファー」
昭和歌謡テイストで、時代の波を乗りこなしていくことをサーファーに例えた曲。
手を前後に広げてバランスを取るようなポーズのサーファーダンスがSNSで流行った。チェリバナの名前を世間に広めた一曲。
ライブでは会場全体の全員でサーファーダンスをする。何ともシュールな光景が面白くもあり、不思議な一体感が生まれた。
「パンダの憂鬱」
はっきりした白黒の模様がカッコイイと言われるパンダ。でも本当はカラフルなグラデーションになりたい。派手じゃダメなのか。白黒がそんな良いのか?
何でも白黒つけてはっきりさせようとする世の中には疲れてしまう。白黒つけなくたっていい。自分の好きな色で自由に生きていけばいい。そんな現代の応援歌。
基本フォーメーションのセンターはマイだが、曲のパフォーマンスの中でフォーメーションはぐるぐる変わり、メンバー全員に必ず見せ場がある。
歌唱力もダンスもハイレベルで、アイドルという肩書きに甘えてはいない。アーティストと名乗っても良さそうだが、チェリバナはアイドルであることに誇りを持っていて、これからもずっとアイドルだ、と今回のライブでも宣言していた。
メンバーみんな様々な紆余曲折があり苦労してきたらしいが、このグループにこのメンバーが集まったのは奇跡だ。運命だったと言っても過言ではないだろう。
2~3曲を続けて歌い、トークを挟んでエピソードトークや曲の紹介をする。たまにエピソードトークが盛り上がり過ぎてトーク時間が予定より長引いてバタバタする時があったりもするが、そういうプチハプニングもライブの醍醐味だ。
5~6曲ごとにVTR映像が流れて、その間に衣装が変わる。結婚式のお色直しのように何度も衣装を替えて登場する。衣装はどれもとにかく豪華。そして豪華だが清楚。
どんな瞬間にどんな角度から見ても綺麗だ。ダンスの振付で回った時の広がり方、身体を捻った時の模様の角度、アクセサリーが揺れる動き方や輝き方、メンバーが並んだ時の見え方、メンバーが重なった時の見え方、などまで緻密に計算されているに違いない。
ライブ中はファンがペンライトを点灯させて振っている。大体はそれぞれが推してるメンバーのカラーで会場全体がカラフルなのだが、曲によっては会場全体が一色に統一されることもあり、とても綺麗だった。ライブはステージ上のアイドルだけではなく会場全体のファンも一緒に作り上げるものなのだとあらためて実感した。
全体を通して、非常に素晴らしく満足度の高いライブだった。
ただ、最後に少し辛口の評価をさせて貰うと、特別に凄いところがあるとは思えなかった。チェリバナが素晴らしいアイドルグループであることは間違いないのだが、これほどまでに大人気になっている明確な理由までは分からなかった。逆に言えば、事務所が決めたコンセプトやキャラ付けに頼らない、メンバーの個々の魅力が素晴らしい、ということなのだろう。
チェリバナが他のアイドルグループと違う点を強いて挙げるならば、綺麗なドレスの衣装を着ているメンバー全員が男性、というとことくらいだろうか。ただ、こんなのは今の時代では些細なことだ。
マイ(真井 正夫)、ナナミ(名波 巌男)、サクラ(佐倉 梅太郎)、ユリ(由利 肇)、アヤメ(菖蒲 門左衛門)、彼等はこれからも「飛び越えるより、ブッ壊す」の精神で突き進んで行くだろう。彼等の今後の活躍に期待したい。