「ねぇ?あんた知ってる?」
「なに?」
「モモちゃんとソラくんが付き合い始めたんだって」
「何それ。似合わねー。笑い死ぬって」
「モモちゃんから告白したらしいよ」
「笑い過ぎて息できん。笑い死ぬって」
「もうすぐバレンタインなのにね」
「もうちょっと待てよ。フラゲすんなっつーの」
「モモちゃんってああいうタイプ好きだったっけ?」
「モモは誰でもいいんだよ。年中ずっと盛ってるからなぁー」
「正直、うるさいよね」
「警察が取り締まるべきだな」
「ははは。盛り過ぎ罪で捕まったりして」
「有り得る」
「あんたはバレンタインに彼氏とデートするの?どこ行くの?」
「いや、どこにも行かないなー。カレ物凄い寒がりだし。私も寒いの苦手だし」
「それでなにするの?本当にどこも行かないの?」
「うちだよ。うちで、こたつデート」
「うわ、あんたも盛ってんじゃないの?」
「違うよ。ぬくぬくするだけだよ」
「そういえば、あんた知ってる?」
「……ん?にゃに?」
「あんた、今、彼氏のこと考えてたでしょ。私の話、聞いてる?」
「いや、ごめんて。聞いてるよ。何?」
「あのね、この前、勉強しようと思って図書館に行ったらさ」
「にゃはっ。君は真面目だなー」
「たまたま見た昔の歴史の資料が面白くってさ。ずっと見ちゃった」
「そういうのあるよなー」
「バレンタインってさ」
「ふんふん」
「昔はバレンタインにチョコレートをあげてたんだって」
「何それ、死ぬ」
「訳分かんないよね。しかも、チョコレートを手作りしてたんだって」
「はぁ?意味分からん。わざわざ手作りするの?犯罪じゃん。っていうか手作りできるの?」
「原料は樹の実らしいよ。家の庭に樹を植えたりしてたのかな?きっと何年もかかるよね?」
「実がなる前に心変わりしちゃったらどうするんだろう?」
「そうなったら、もちろん、実がなった時に好きな相手に渡すんでしょ」
「別の他の相手の為に作ってたものを、好きな相手に渡すの?」
「良心とか理性とかないのかな。そんなのただのケモノだよね」
「笑い死ぬって」
「昔って不思議だよね」
「昔の奴等のやることって訳分からんなー。根本的に別の生き物って感じする」
「ねぇ。不思議だよねぇ」
「何だっけ?ニンゲン?だっけ?」
「そうそう、ニンゲン」
「そんなことやってたからアホ過ぎて絶滅したんだろうなー」
「でも、こたつ発明したのニンゲンらしいよ」
「すっげー。天才じゃん。ニンゲン神じゃん」
「ははは。自分のこと神だと思って調子に乗ったのかもね」
「ニンゲン謎だなー」
「それで結局、あんたバレンタインには彼氏に何あげるの?」
「そりゃもちろんマタタビでしょ。にゃはっ。こたつでカレとマタタビ」
「うわー、エッチにゃーん」
「にゃにもしないって。一緒に丸まってぬくぬくするだけだよ」
「それがエッチなんだにゃ」
「君にはチョコあげる」
「にゃはは。やめろっつーの。死ぬから」
「大丈夫。死んで化け猫になってもずっと友達でいてやるよ」
「にゃーん!」
2匹は手を上げてハイタッチした。
肉球が、ぷにっ、と弾んだ。